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バツイチ・アラフィフの育児ブログ。略称「こどめし」。なまあたたかく見守ってやって下さい。

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昭和プロレス最終回

※プロレスネタです。前後の記事と全く違う内容・テイストですみません。興味ない人はスルー推奨。個人的にどうしても書いておきたかったので。

11/15(日)に両国国技館で行われた「〜天龍源一郎 引退〜革命終焉」に行ってきました。ムスコの風邪は治りかけくらい(その後ぶり返したのは既報の通り)でしたが、パートナーに預かっていただきました。ありがとうございます。

以下、感想。

 

 

天龍源一郎引退〜革命終焉。

見事な「昭和プロレスの最終回」だった。

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この日の会場に詰めかけたファンはおそらく、最近の新日本やDDTなんかの会場に来ているファンとは客層が違っていたのではないだろうか。少なくとも私が見回した印象では会場にいたのは40〜50台の男性ファンが多数を占めていたように思う。もちろん、天龍のファンが多いことは間違いないのであるが、私のような普段プロレスの興業を見に行かないオールドファンもきっと多かったのではないかと思う。

そんな、昭和プロレスファンの集まる祭りだった。

事実、途中の試合で盛り上がるシーンは「昭和の名場面」ばかりだった。会場のファンはザ・グレートカブキのヌンチャクや毒霧に歓喜し、越中詩郎のヒップアタックに絶叫し、藤原喜明の脇固めに感涙し、長州力リキラリアットやサソリ固めに狂喜していた。ここにいるのは、時代遅れのプロレスファンたちだ。

そしてメインイベント。天龍の対角のコーナーに現れたのは「新世代の王」である新日本プロレスの若きIWGPチャンピオン、オカダ・カズチカ。昭和プロレスファンの「仮想敵」とも言えるレスラーだ。

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誤解を恐れずに言えば(こういうことを書くと「プロレス八百長論者」が喜びそうだが)勝敗はやる前から明らかだった。現役バリバリのチャンピオンに、65歳の老レスラーが負けるのは当然だ。ただ、戦前から天龍は無謀だと言われながらも「勝ちに行く」と公言してはばからなかった。そして確かに、天龍は全力で勝ちに行っていた。しかし残念ながら、どう見ても天龍の身体は限界を超えており、現役王者であるオカダとまともに勝負が出来る状態ではなかった(ように見えた)。

それでも天龍は歯を食いしばって立ち上がり続けた。ゆっくりとした歩みでWARスペシャルを出し、低空ではあったが延髄斬りを放ち、ホールドできなくてもパワーボムを炸裂させた。往年の必殺技に会場のファンのボルテージも上がる。チョップを撃ち、パンチを見舞う。言葉だけでなく、現在の全力をもって天龍は勝ちに行っていた。

それでも、オカダ必殺のレインメーカーで勝負が決する。天龍が現役最後の3カウントを聞く、国技館の天井を見ながら。オカダが勝ち、天龍は負けた。いくら天龍ののファイトを全盛期の如く脳内で補完したとしても、勝敗は現実だ。衰えた65歳の肉体ではやはり現実を覆すことはかなわなかったのだ。そこで「昭和プロレスファン」」の妄想は終わった。

 

それにしても天龍は自分の「最期の試合」に、なぜこうまでも過酷な勝負にこだわったのだろうか。

確かに、天龍自身の生き方として最期まで勝敗にこだわったのだろうとは思う。天龍の美学として、最後であっても往年の名選手同士が対戦する回想的なセレモニー試合ではなく、最前線の試合を望んだのは間違いない。もしかしたら、本気で2年前のオカダの発言に怒り(「アンちゃん、吐いた唾は飲み込めねえぞ」の名台詞は最高だった!)若者を懲らしめようとしたのかもしれない。

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試合後の引退セレモニーで、スタン・ハンセンテリー・ファンクが花束を持って登場。ああ、ここに川田や冬木がいたらいいのになあ、馬場も鶴田も三沢もいないんだったなあ、とぼんやり思いながら、ようやく私は気が付いた。

これは「昭和プロレス」の最終回なのだ。

前記の通り、往年の名レスラーたちが多数出場した前座の試合。彼らは確かに「現役」ではあるが、やはり「第一線」の選手ではない。それでも我々昭和プロレスファンは、元気なころの姿に「脳内補完」して声援を送る。

でも、それでいいのか。過去の栄光にしがみついて、未練たらしく昭和の幻影を追い求めるのはそろそろ終りにしようや。天龍は自らの肉体でそう語っているように思えた。だからこそこの大一番の対戦相手に長州や藤波ではなく、新しい世代の象徴でもあるオカダを選び、そして「昭和の最期」の象徴として自らの首を差しだしたのだ。

「オレを葬るのはオカダ、お前しかいない。昭和プロレスを見事に介錯してくれ」と。

そのために天龍は前座の試合に往年の名レスラーたちを集めた。カブキ、小鹿、藤原、長州、さらには小川や北原。リッキーやライガーも入れてもいいだろう。欠場中でなければ藤波やタイガーも出場していたかもしれない。

猪木も来ればいいのに……と思ってハタと気が付いた。猪木本人はいなくても、猪木の「亡霊」は確かにいた。藤田和之。この日ただ一人「引退興行」という空気を読まずに会場をブーイングの嵐にした男が、わずかに見せたプロレスの技は、コブラツイスト卍固めであった。さすがは猪木、である(→昭和プロレスの妄想!)。

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オカダ・カズチカ(と新日本プロレス)は、よくぞこの試合を受けてくれた。オカダにとっては、負けると失うものが多い割りに勝ってもさほどメリットがない試合である。現役王者がよそのリングで試合をするのはそれだけでも難易度が高い上に、試合そのものも非常に難しかった。序盤こそ、天龍もそれなりに技の攻防を見せていたが、中盤からはかなり苦しくなり、立ち上がるのさえ厳しくなってきた。そうなると投げ技や飛び技は使えない。オカダは打撃技は普段あまり使わないので、試合の組立に窮してしまった(ように見えた)。

そこでオカダが選んだのは、彼の持つ数少ない打撃技であるドロップキック。オカダのドロップキックは長身とジャンプ力を活かした高い打点と美しいフォームに定評があるのだが、この日オカダが出したのはいわゆる「低空ドロップキック」であった。なぜなら、天龍が立ち上がれないからだ。この点一つとってもオカダにとって難しい試合だったことがわかる。それでも若き王者は、偉大なる先輩レスラーへ最大限の敬意を表して、自分のフィニッシュ技・レインメーカーを放ってその役目を全うした。

試合後、立ち上がれないままの天龍に、立ったまま深々とお辞儀をするオカダの姿がこの日のハイライトだったように思う。オカダもあるいは、この試合の本当の意味を理解していたのかもしれない。だからこそ、天龍と、昭和プロレスの偉大な先輩たちへの敬意を表しての礼だったと思う。オカダはきっとこの試合で多くのものを天龍から受け取ったに違いない。まさに、天龍源一郎の「置き土産」となった。

かつて私の私淑する押井守監督は「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」という作品で、「オタクよ、現実に帰還せよ」というメッセージを送った。しかしその主張はほとんどの人にスルーされて届くことはなかった。それでもごく一部ではあったがそのメッセージを確実に受け取った者もいた。あの時と同じようにこの日の天龍の「隠されたメッセージ」に気が付く人はそう多くないのかもしれない。それでもこの日天龍源一郎の勇姿は、この日詰めかけたファンの脳裏に焼き付いたことだろう。

ありがとう、天龍。

さようなら、昭和プロレス。

この試合を見に来れて本当に良かった。

 

 

RevolutionTシャツは会場で購入できました。DVDは悩み中……。